2016年07月17日

坂本博之弁護士に「常総水害に関する法律問題」をご教授頂きました!

7月16日、水害・被害者の会の集まりに
坂本博之弁護士が来てくださり、水害訴訟についてご教授下さいました。

以下、坂本博之弁護士のお話をご紹介致します。


常総水害について法律の面から話をする。
水害訴訟では、損害賠償請求をするということが第一に思いつく。
民間人に対しては民法709条に基づく損害賠償をすることも考えられるが、水害で被害を受けた場合、国家賠償法に基づく訴訟を行うのが普通だ。
民法709条も国家賠償法も基本的な考えは同じだ。
加害行為があって、損害の発生があり、その両者に因果関係がなければならない。
例えば、これは交通事故でも同じだ。
 
損害賠償請求を行う場合、被害者立証責任がある。
被害者の側が、加害者が黒であるということを証明しないといけない。
被害者側の立証に対して、加害者側も自分は白だと主張するだろうが、それも証明しないといけない。
 
例えば、AがBに100万円を貸した場合を考える。
Aが金を返して欲しい場合には、Aが金を貸したということを立証する責任がある。
もし立証できなければBが勝つ。
一方、もしもBは返したというのであれば、返したことを立証する責任がある。
もし立証できなければAが勝つ。
 
水害訴訟においても、加害行為と損害発生と両者に因果関係があることを原告が証明しなければならない。

原発や鉱山からの公害については、被害者の証明責任が緩和されている。
しかし、水害の場合は、原告の証明責任の緩和はない。
 
加害者故意、過失があることが基本だ。
故意はわざとやること、わざと堤防に穴を開けるなど。
過失予見可能性結果回避可能性だ。
前もって予想できたか。結果を回避できる方法があったか。
鬼怒川の堤防についていえば、きちんとした高さの堤防を造らなかったら越流・決壊することが予想できたかが問題となる。
また、それを回避する技術があったかも問題になる。
 
私自身は、水害訴訟は行ったことはない。
水害訴訟について調べてみると、現在まで大きな影響を与えている裁判は、大東水害訴訟多摩川水害訴訟だ。
河川改修がされていなかったり、改修途上にある河川では、水害の発生が特に高まっていなければならない。
大東水害訴訟以降、水害被害者は裁判で勝てなくなった。
 
なお、多摩川水害訴訟では被害者が勝った。
しかし、18年間もかかった。
改修が終わっている河川であれば、住民の安全を保証しなければならない。
 
水害訴訟を行う場合、理論の構築や、証拠の収集をしなければならない。
水害の原因がなんだったのか。
計画高水流量よりも低い流量で決壊したのは国の責任だ。
河川整備が不十分だった。
・・・・・
鬼怒川の決壊の歴史の整理も必要だ。
 
メガソーラーの事業者にも責任があるのではないか。
若宮戸では、2箇所から溢水した。
国や業者、市なども一緒に被告にすべきだろう。
国交省は業者が自然堤防を掘削したときに土嚢を並べている。
 
茨城県にも責任があるだろう。
湯西川ダムは治水目的もあった。
茨城県も治水負担金(111億円)を出している。
国は堤防を造るよりも上流にダムを造ることを優先した。
ダムを造るに当たり茨城県に治水負担金を支払っている。
ダムを造ることが県民の生命・財産を守ることに繋がるとして支出されている。
このような水害が発生し、県民の生命財産を守るための義務が果たされていない。
 
市街地では排水機場の不備があった。
どこから来た水で被害を受けたのかにより、訴える相手が変わるだろう。
排水機場の操作の誤りがあったのかどうかの調査も必要だろう。
 
被害に遭った人の中で、水が来るぞという連絡が遅れたため、逃げ遅れた場合は市の責任だ。
避難計画がきちんとできていなかったというのであれば、これも市の責任だ。
避難指示の問題も訴訟の対象になり得ると考える。
 
国家賠償法の他に、刑事告訴住民訴訟義務付訴訟ということも考えられる。
 
犠牲者が出ているので業務上過失致死による刑事告訴も可能だろう。
水害で怪我をした人がいれば刑事告訴できるだろう。
 
住民訴訟は、地方自治法第242条に基づき、都道府県や市町村に対して公金支出の差し止めを求めたりする方法だ。これは国に対して行うことはできない。
何に対して、どういう裁判をやるかを考えないといけない。
江連八間土地改良区市から補助金が出ていたということなので、公金の使い方がまずかったとして市を訴え、江連八間土地改良区に対して市は損害賠償請求せよとやることができる。
 
義務付訴訟は、国や地方自治体が本来やらなければいけないことをしない時にやるよう請求する訴訟のこと。
例えば、常総市内の堤防を速やかに耐越水堤防にしろというのが義務付訴訟になる。
常総市内の堤防は、昔のままなので、安全な堤防にせよと求める。
 
その他、違法確認訴訟というものもある。
 
行政訴訟(住民訴訟、義務付訴訟など)は、勝つのは難しいが、世論喚起や国にわからせるという効果はある。
勝ち負けはともかく世論をつくっていく、政策をつくっていくという裁判もある。

 



主な質疑は以下の通り。

Q1:刑法第119条「現住建造物等浸害」で刑事告訴するのは無理か。
 
A1:出水に対する「故意」がないのであれば、無理だろう。
 
Q2:越水しても決壊しない堤防技術が既にあった。
 
A2:そのような技術があったのであれば、国家賠償法で国の不作為を突くことができるだろう。
 
Q3:民法第709条の不法行為は国も相手にできるのか。
 
A3:できる。ただし、国や自治体に対して不法行為による損害賠償請求をするときは国家賠償法で行った方が有利だ。
 
Q4:賠償を求める考え方と、水行政をただすという考え方の二つがあることがわかった。両方やっていった方がいいということなのか。
 
A4:エネルギーがあればやった方がいいだろう。水害訴訟は大変な裁判なので、エネルギーを1つに集中した方がいいと思う。
損害賠償請求で治水行政の誤りを正していくことになるのだろう。
 
Q5:若宮戸は2400m3程度で溢水が開始した。堤防があってしかるべきだ。放置していたのは不作為だ。
 
A5:ここだけが低かったとなれば、いけるかもしれない。
水害裁判をしたとき、国交省側は未整備なところが多数ある。どこが切れてもおかしくなかったと言って逃げるだろう。
 
Q6:若宮戸は河川の拡幅や河道を掘削していなかった。河川法を順守していなかった。これは瑕疵だ。
 
A6:河川整備計画は今までは無期限だった。
だから、過渡的安全性で全部却下されてしまっていた。
今回30年間という期限付きの河川整備計画が出た。
 
Q7:被害者の会のメンバーは、被害地にまんべんなくいるのか。
 
A7:いる。
 
Q8:義務付訴訟や違法確認訴訟は本人訴訟も可能か。訴訟費用はいくらかかるか。
 
A8:本人訴訟は可能だ。印紙代13,000円と切手代6,000円でできる。
 


意見として以下のものが出された。

意見1:「とんでもない自然災害だった」に落とし込もうとしている。しかし、近年まれに見る雨だったとは言えない。
降雨量ではなく、流量と水位が重要だ。流量は特に問題なかった。
土木学会の中でも、2〜3人は雨量は関係ないと言っていた。
 
意見2:気象庁の研究所は、人的災害の可能性が高いといっていた。
 
意見3:水管橋のところは、2001年7月に2704トン、2002年7月に2765トンで溢水した。今回は2400トンで溢水した。
2001年の時も堤防を造ってくれと要望が出ていた。市か住民から出した。
2001年に堤防築造要望したが15年も放置したのは不作為だ。
 
意見4:排水機場の操作をきちんと行っていたらどうなっていたのかの確認も必要だ。
 
意見5:県道土浦境線より北は若宮戸の溢水の水、南は三坂の堤防決壊水だ。
→石下駅周辺は、最初は若宮戸の溢水の水だったが、その後南から水がやってきたという証言もある。
 



時効は、被害が発生してから3年だ。
もし裁判するとなると、何人か弁護士を集めて弁護団を結成し、弁護士と主だった人の間で中味、どういう理論構成でいくかを考えないといけない。
中身を詰めていくために何回か打ち合わせをしないといけない。
訴訟を起こすまでに、恐らく半年位はかかるだろう。
弁護士費用は、弁護士との話し合いによる。


posted by joso at 00:20| 検証 鬼怒川水害 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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